第36章 井上颯人と離婚しなさい

「君はことあるごとに夫とは離れられないと言う。たとえ彼が浮気し、不倫し、君を利用していようとも気にする様子はない。だが時折、彼を少しも愛していないようにも見える」

「それとも、愛があまりにも深すぎるのか? 彼のすべてを許容できるほどに」

福田祐衣は深く息を吸い込み、口元に苦い笑みを浮かべた。

「宮本社長、物事はあなたが思うほど単純ではないのです」

それは体よくあしらうための決まり文句だったが、宮本陽叶は意外にも食い下がってきた。

「どれほど複雑なんだ?」

福田祐衣は虚を突かれて顔を上げたが、その視線は冷徹で深淵な瞳と衝突した。

宮本陽叶の瞳は秋の水のようだ。一見穏やかで静謐だが...

ログインして続きを読む